292 研究施設の現状と将来計画
8-1 極端紫外光研究施設(UV S O R )
U V S O R 施設は2003年の光源加速器高度化(低エミッタンス化,直線部増強)とそれに引き続くアンジュレータ の増設,トップアップ運転(一定ビーム強度運転)導入により,1. G eV 以下の低エネルギーシンクロトロン光源とし ては世界的にも最高水準の高性能光源となった。さらに,光源加速器で唯一建設来手つかずの装置である偏向電磁石 をビーム収束作用を持つ複合機能型に交換することで,電子ビームエミッタンスを現在の 27.nm-rad から 15.nm-rad 程 度まで下げ,さらに高輝度化を図る高度化改造計画が,2011年から2012年にかけて進行中である。この改造に合 わせて,アンジュレータ1台が増設され,周長 50.m の小型光源に合計6台ものアンジュレータが稼働することになる。
ビームラインはスクラップアンドビルトにより数を絞り込み,競争力のあるビームラインを中心に重点的に整備を 進めており,現在は12本が稼働している。このうち2本の偏光可変型アンジュレータビームラインは世界的にも最 高水準の性能を誇り,固体の光電子分光による研究に威力を発揮している。また,2本の真空封止型アンジュレータ ビームラインは気体や液体の特徴ある分光研究に利用されている。2012年に設置されるアンジュレータビームライ ンには国内では初めてとなる軟X線顕微分光装置が組み込まれ,U V S O R の高輝度特性を活かした研究が展開される 予定である。
新しい光源技術の開発として,レーザーと電子ビームを用いた光発生とその利用法に関する研究を,文部科学省の 受託研究として進めており,装置の整備が順調に進んでいる。2012年にはコヒーレントなテラヘルツ光・真空紫外 光の試験利用を開始する。
光源加速器の高度化は2012年度の改造で一段落し,その後はより高い光源安定性の実現へ向けた改良・技術開発 へ重心を移す。また,老朽化の進んでいる一部のビームラインについては,整理統合の可能性も排除せず更新・高度 化の検討を進め,段階的に実施する。
上記のように既存設備の性能を世界最高水準に維持し高度な利用研究を推進しつつ,次期計画の具体化に向けた検 討を進める。
i). 1.5–2.5GeV 級新第3世代リング ii). 1GeV 級超高輝度リング
iii). ライナックによる軟X線自由電子レーザー iv). 小型エネルギー回収型ライナック
など様々な可能性が考えられるが,需要,予算,敷地,加速器技術の進展,他施設の動向なども考慮しつつ,計画を 練り,最適なものを選択する必要がある。i ) は比較的低エネルギーで汎用性の高い高輝度光源の実現を目指すもので あり,S P ri ng -8 では十分に対応しきれない V U V軟X線領域での高輝度光源を実現することで,我が国では S P ri ng -8 以外に真に第3世代光源と呼べる光源がない状況を打破しようとするものである。i i ) は汎用性よりも光源性能をより 重視し V U V 領域での超高輝度光源を実現しようとするものである。i i i ) は高輝度ライナックによる軟X線領域でのシ ングルパス型自由電子レーザーの実現を目指すものである。リング型光源と相補的な光源となるはずである。i v ) は リング型光源の限界を打ち破る光源性能を実現し,且つ,リング型光源の汎用性も有する施設の実現を目指すもので ある。これらのうち i i i ) については,既存加速器を運用しつつ整備を進めることができる可能性があること,現在進 めているレーザーと電子ビームを用いた光発生技術を活かせる可能性があること,などの利点もあり,今後,優先的 に検討を進める。